先日「バイキングmore」で、QBハウスの雇用問題が取り上げられていた。何日か前からニュースになっていたので、気にはなっていた。というのも、QBハウスと聞いて昔よく行ったCut Aのことを思い出していたからだ。
会社都合で北陸エリアに住んでいたとき、住んでいたマンションの近くにCut Aがあり、よく利用していた。いつも人がいっぱいいて、中も広くて大きな店舗だった。
そこに8年近く通っていたときにいつも感じていたことは、従業員の出入りが激しいことだ。店長以外、どの従業員も半年と続かない。辞めたのか転勤になったのかはわからないが、とにかく毎回カットしてくれる人が変わるのだ。
ニュースになっていたQBハウスでの問題点は、雇用形態についてだった。同社では一部店舗の理髪師をQB本社が雇用するのではなく、エリアマネージャーが雇用する形式をとることによって、本部が雇用責任を免れていたらしい。
社員が社員を雇用するという異様な雇用形態は、さまざまな大手企業にも広がりを見せているようで、脱法行為の狙いも指摘されているようだ。先月、冠婚葬祭大手ベルコでも同様の雇用形態が問題になっており、裁判で会社と労働者との間で和解が成立したようだ。
さて、Cut Aではカットする前に、バリカンを使ってまず余分な髪を先に刈る。時間短縮の意味もあるのだろうし、多分会社の規定で決まっているのだろう。どこの店でも、誰であっても、段取りは一緒だ。
でも、何だかそれは違うだろうという気が、ずっとしていた。しかし、あまりにも定式化されていたので、「バリカンは使わないでください」とは言えなかった。
そんな中でも気さくに話しかけてくる人も、何人かはいた。ある時その中の一人が、「ちょっとお客さん聞いてくださいよ」って感じで話をし出した。よほど腹に据えかねることがあったのだろう。
まず驚いたのは、本部から急にやってきた人が勤務表をチェックし、土日に出勤していない人たちを即クビにするという話だ。まずそんなことが簡単にできることが、驚きだった。どう考えても不当解雇だろう。多分、組合などはないのだと思うが、それにしてもそんなことが簡単にできるとは思えない。もちろん、この人の話だけなので、真偽の程は確かではない。
あと、出張でヘルプで行くときは、交通費や宿泊費は自腹だとも言っていた。当然、アカになると言っていたが、なぜそんなことをするのか理解できなかった。わざわざ仕事をして、損をする人間がいるのだろうか。なんだか話が怪しくなってきたので適当に相槌を打っていたのだが、全くの嘘や出鱈目でもなかったような気がする。ただ、話半分としても、実際の職場環境は相当厳しかったのだっただろう。
そもそもCut Aに行くようになったのも、あまりに今までの散髪屋の料金が高くなったからだ。散髪代は少しずつではあるが、毎年必ず上がっていたような気がする。そしてあるとき、料金が3,990円になったときに、「これはもう限界だな」と思った。
いくら物価が上がっていたとはいえ、これだけ毎年価格の上がる業種は他には見当たらない。当時は格安ヘアカットの店が、ぼつぼつ目につき始めた頃だった。そして試しに入ったのが、Cut Aだった。そのとき驚いたのは料金ではなく、こんなに短時間で仕上がるのだということだった。
散髪するのは1時間かかるのが普通だと思っていたので、数十分で終わることに感動すら覚えた。Cut Aではそこそこ人が待っていてもカットする人がたくさんいるので、それほど待つ時間も長くない。これが個人の散髪屋だったら、1時間ぐらい待つことは珍しくなかった。
後、仕上がりも申し分ない。これで1,500円なら、「安くて、早くて、上手い」の三拍子だ。いったい、今までの散髪はなんだったんだろうと、考えさせられてしまう。
その後、会社都合で引っ越してからは、カットコムズを利用するようになった。周りにCut Aがなかったことと、カットコムズが何かと便利な場所にあったせいだった。
ここは顔剃りがない分時間も早く終わり、その上値段も安い。あと、カットに特化している分、カット自体も上手いような気がした。当初は料金も1,000円と、信じられないような価格設定だった。しばらくすると1,100円になったが、それでも安すぎるので文句を言う気にはなれなかった。
そして次の引っ越し地でも、また近くに散髪が見つからなかった。よくよく考えてみたら、散髪だけはどうしても誰かにやってもらわないと自分では対処できない。なので仕方なく義妹にカットしてもらった。義父や義母のカットをするついでに、わたしもカットしてもらったのだ。今は安くていい道具があるので、慣れてくれれば仕上がりは上々だ。彼女は手先が器用なので、なおさら何の問題もない。短めに刈ってもらったら、数ヶ月は持つのでありがたい。
その後あるとき、たまたま近所を歩いていると、昔ながらの散髪屋を見かけた。中を覗くと老夫婦が、二人で働いていた。それから前を通りがかるたびに、中を覗くようになった。いつも何人かの客がいて、カットしてもらっている。「固定客がついているのかな」と思いながら通り過ぎようとしたら、価格表に目がについた。「カット 1,500円」となっていた。
そのときは本当に驚いた。町の散髪屋で1,500円?散髪屋は組合がしっかりしていて、価格を勝手に安くすることはできないと思っていた。だからどこの散髪屋に行っても同じような値段で、休日まで一緒だ。まさに談合そのものだった。
顔剃りなしになっているが、それにしても安い。試しにと寄ってみたら、当然のことながらちゃんとしている。申し分はないのだが、この店主がところ構わずオナラをする。初めて行った時も、座って待っているわたしの目の前でオナラをした。最初は何が起こったのか、理解できなかった。カットされている客はもちろん、当の店主も何もなかったような顔している。もしかしたらわたしがしたのかと、思わずお尻に手をやったぐらいだ。
そのとき、もう出て行こうかとも思ったのだが、どちらにしても早いうちに散髪はしなければいけない状態だった。それに、また別の散髪屋を探すのは面倒だったので、仕方なくそのまま待った。しかし今後は義妹に頼もうと、硬い決意をしながらカットしてもらった。