歩きスマホなどしないと思っていたが、思わぬ落とし穴があるものだ

Miscellaneous notes

わたしは基本的に、歩きながら携帯を見ない。もちろん、危ないからだ。ただ、周りを見渡してみると、本当に歩きスマホをしている人が多いことに驚かされる。ちょっと駅の周辺に行くと、当たり前のように携帯を触りながら歩いている人たちがいる。もちろん、前など見ていない。
よくこの人混みの中、他人に当たらないものだなと感心して見ていると、どうやら反対側からくる人が何気に先に避けているようだ。わたし自身も確かに無意識なのかどうかわからないが、未然に歩く方向をずらしている。多分関わりたくないので、自然と危機回避しているのかもしれない。なるほどうまい具合になっているものだ。
もしわたしが悪意を持って敢えて道を譲らなかったら、間違いなくぶつかっているだろう。そういうイメージで歩いてみたら、確かに実感できた。そのなると相手は携帯を落とすだろうし、もしかしたら本人自身も転んで怪我をするかもしれない。しかしどう考えても、こちらにとって特になる要素は見当たらない。何だか理不尽な話だ。
当たりかける寸前に、「あぶない」と声を出しそうになったこともあった。何でこんな人通りの多い中で前を見ずに歩くのかが、どうしても理解できなかった。変な奴に絡まれたり、事件に遭遇したりする可能性を考えないのだろうか。
わたしは家族との連絡にラインを使っているだが、歩きながらは使わない。出先で連絡する場合も、だいたい歩き始める前にラインを送る。ただ、返信が来たときには、歩きながら確認だけするようにしている。今までそれで特に問題はなかった。
今日もいつものように奥さんにラインで連絡を入れたあと、駅に向かって歩き始めた。しばらくすると返信が来たので、ポケットから携帯を取り出して確認した。それだけで誰からラインが来たのか、また内容は何なのかだいたいわかる。いつもならそのまますぐに携帯をポケットにしまって、歩き続けるだけで何の問題もない。
ただ、今日に限ってなぜだかわからないのだが、そのメッセージを既読にしようとしたのだ。多分見たことを、相手に知らせるためだろう。そのためにはラインを開ける等の操作が、別途必要になる。しかし、時間にして数秒のことだ。そう思いながら携帯を触っていると、横断歩道に近づいていた。信号は赤だ。携帯を見ながらでも周りの状況は、大まかには見えている。
歩きながらの携帯の操作に慣れていないせいなのか、いつもなら数秒で終わるラインの操作にもたついてしまった。横断歩道の前で止まって待っていたのだが、わたしの前にいた人が横断歩道を渡り始めた。そのあとでわたしの左側から車が左折して、わたしの目の前を通り過ぎていった。
「歩行者優先なのに危ない運転をするものだ」と思いながら、わたしも横断歩道を歩き始めた。そのときだ。「あれ、ここは 歩車分離式信号だったはずだ」と思って顔を上げた。反対側にいる人たちは皆無言で立って待ったままだ。そして彼らから強い視線を感じたので、反射的にすぐに元の場所に戻った。
そうなのだ。先の人は信号を無視して、横断歩道を渡ったのだ。たまたま車がこなかったので難を逃れたが、もし車が来ていたら大変なことになっていたかもしれない。ほんの一瞬の気の緩みでこんな状況になるとは、思ってもみなかった。
信号が青になるまでとてもバツが悪かった。日頃はあまり気にしないのだが、この時ばかりは他人の視線がやたら気になった。やはり歩きながら携帯を触るものではない。つくづく思い知らされた。

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