自分で考えていることを英語で表現しようとしても、すぐには単語が出てこない。
だいたい、どの単語から始めていいのかが、わからない。
いくつか英作文の本を買ってみたが、なかなかうまく表現できない。
何かいい教科書はないかと、常に探していた。
図書館で見かけたのが始まり
最初に図書館で「英語論文ライティング教本」を見つけた時は、衝撃的だった。
英語のライティングに関して、これだけ丁寧な教本があるとは知らなかった。
多分、単に私がたまたま見つけられなかっただけだろう。
英文を書く者にとって知りたいポイントが、とても分かりやすい文章で書いてある。
英語と関係のない科学関連の棚に並べられていたので、最初は違和感があった。
本当に、たまたま目についたと言う感じだ。
副題にもあるように、「正確・明確・簡潔に書く技法」を説いている。
科学技術系英語の教科書によくある感じだが、この本は文系でもわかるように丁寧に書いてある。
基本的には、理系研究者や学生向けに書かれた書籍だが、英語論文執筆または技術英語の学習が初めての人にもわかりやすく書かれている。
「覚える英語」から「考える英語」へ移行できるように、英語表現の理由付けと根拠を考えながら学べるように工夫されている。
いつも心に「読み手」のための「3つのC」
基本は、3つのC ; Correct, Clear, Concise(正確、明確、簡潔)。
この中でも最も大切なのは、「正しく書く」ことだ。
あと、常に「読み手のために書いている」ということを、心に留めておく必要がある。
この「3つのC」と「読み手のため」という考え方は、この本の基本コンセプトだ。
常にこれらの「ぶれない軸」に沿って、伝わる英語へと「方向転換」すること提案している。
Correct に書くために
非ネイティブが英語論文を正確に書くために、「5つの誤り」を防ぐ。
- 英文法誤り
- 用語の誤り
- 直訳による誤り
- スペルミスや数値誤り(ケアレスミス)
- 句読点、略語、数の表記の誤り
英文法誤りでは、まず「名詞」と「動詞」を理解することを勧めている。
「名詞」の習得とは、名詞の「数」と「冠詞」を理解することだと言い切っている。
この二つについては第2章で、丁寧に解説されている。
用語の誤りでは、複数の辞書とネット検索を勧めている。
ネット検索においては信頼性の高いPDFファイルを活用するために、Googleでは「filetype:pdf」を入力して検索することや、「画像検索」や「動画検索」を使って単語の意味を深く知ることが大切だ。
直訳による誤りでは、日英は対応しないことを心に留めておく。
特に日本語の「漢字表現」では、漢字に引きずられないように注意する。
スペルミスや数値誤りでは、チェックを徹底すること。
スペルチェック機能や各種支援機能も利用する。
句読点、略語、数の表記の誤りでは、「スタイルガイド」と「テクニカルライティングの書籍」を手元に置いて、参考にする。句読点、略語、数の表記は学校で習わないので、どう対応していいかわからない。
英語を書くときの指針は、「スタイルガイド」「テクニカルライティングの書籍」
テクニカルライティングの原則を指針にする
「テクニカルライティングの書籍」とは「伝わる文書を書くための英語の工夫がつまった参考書のこと」で、「The Elements of Technical Writing」を紹介している。
例として、Principles of Technical Communicationの指針を挙げている。
- Use the active voice.
- Use plain rather than elegant or complex language.
- Delete words, sentences, and phrases that do not add to your meaning.
- Use specific and concrete terms rather than vague generalities.
- Use terms your reader can picture.
- Use the past tense to describe your experimental work and results.
- In most other writing, use the present tense.
- Make the technical depth of your writing compatible with the background of your reader.
- Break up your writing into short sections.
- Keep ideas and sentence structure parallel.
著者も言うように、このように箇条書きで10個並べてもらうと、何だか「英語を書く上でのまっすぐな一本道が見え」るような気がする。そういった意味でも常に手元に置いて、英文を書く時に参考にするのがいいのかもしれない。
ただ、この本は少々お高いようなので、同じく紹介されているもう一つの「The Elements of Style」の方が、最初はいいかもしれない。
100ページほどにコンパクトにまとめられており、平易な単語を使ってわかりやすく説明している。とてもオススメだ。
ただ、この本ってこんなに値段が高かったかなと思い、自分の持っている本を調べてみた。
もう10年以上前に海外で買ったものだと思うのだが、価格を見てみると$9.95になっている。
だいたい1ドル115円と計算すると、日本で買う値段の半額以下の価格だ。
これぐらいが相場なのだろうか。
買った時はもしかしたら、1ドル80円台の時代だったかもしれない。間違いなくお買い得だった。
スタイルガイドで詳細な決まりを知る
スタイルガイドは、9つほど紹介している。それぞれ特徴があるのだが、その中でもおすすめの一つに「The ACS Style Guide」がある。
「アメリカ化学会が出版しているスタイルガイド」らしい。
そして、”Write economically”「節約して書こう」を例にあげて、
やめる表現 使ってもよい表現 a number of many, several a small number of a few at the present time now during that time while
と簡単に表現するための工夫が教示されている。このガイドはネイティブにも向かれて書かれているので、我々非ネイティブは積極的に活用すべきだろう。
Clear & Concise に書くために
明確で簡潔に書くために、「7つの主義」をあげている。
動詞主義
「名詞形を減らす・具体的な動詞・他動詞を使う」
名詞形として隠れた動詞を探すことによって、動詞1語で表す工夫をする。
動詞の名詞形が増えると前置詞や冠詞、それに単語数までが増え、読み手も書き手も負担が増えて誤りも増えてしまう。
句動詞を避けて動詞1語で表せないか検討する。
1語でも減らす努力が必要になる。
最も力強い印象を与えるSVOを使う。
最もシンプルで明快な印象を与える。この考えは今後もライティングの核となってくる。
能動態主義
「モノが主語の能動態を増やす」
主語に「モノ」を使った上で、「能動態を使い」ながら「客観的に書く」工夫をする。
肯定主義
「notをやめて肯定表現する」
内容が「否定」であっても、「肯定表現」で表す特徴のある英語で、「否定形」を使うと否定的な文脈の印象を与え、語数も不要に増える。
明快主義
「具体的に書く、「等」も消す、1つの意味を伝える」
「等」を etc.や and so on とせず、「等」の意味を英文に残す工夫をする。
簡単主義
「平易な単語を使う」
平易で読み手の負担にならない単語を選択する。業界用語も避ける。
節約主義
「1語でも無駄な単語を減らす」
無駄な語数を減らすことで、他の重要情報を含める余裕が生まれる。
これに関して著者はとても拘っている。たとえ1語でも減らせるのなら、そうする努力を惜しまない。
結局、そう言うことの積み重ねなのだろう。
ワンパターン主義
「◯ Never be afraid of repeating the same expression. v.s. ✖️ Vary your style.」
同じ表現を繰り返すことで、自分の表現パターンを確立する。
私の感覚では、英語は言い換えが必須だと思っていた。どれだけ違う表現をするのかが、英語だと思っていた。英語の試験では、言い換えが理解できるかどうかがポイントだった。
Correct のための基礎文法
「名詞」と「動詞」を英文の必須要素として、詳しく説明している。
「名詞」では、まず「数」と「冠詞」の重要性を説いている。
その判断手順をフローチャーを使いながら説明しており、とてもわかりやすい。
「動詞」では自動詞と他動詞を予測することと、「現在形」「現在完了形」「過去形」の3つの時制を理解する。
なぜこの本は、これほど分厚く、文字も小さくして、多くの内容を詰め込んでいるのだろう
この本は過去に京都大学で10年間理系の大学院生、M1からドクターまでが対象の論文英語のライティングの授業をベースにして書かれているそうだ。
突然、京都大学では英語専任講師を雇うことで非常勤の雇用がなくなったり、名古屋大学では該当科目が廃止になったことが書かれている。
「一般英語ではなくテクニカルライティングを教える英語の先生が増えますように」と、「10年間の想いを詰め込んで書いた」そうだ。
だから、これだけ細かく詳細に書かれているのかと思ったのだが、本当にこれを90分15回の講義で全て話し切れるものだろうか。多分、準備の段階ではこれ以上のものを用意しているのだろう。それだけ想いが詰まっているのかもしれない。
早速他の書籍も探してみる
別の書籍はないかと本屋に探しに行ったら、一冊見つかった。
こちらは「技術系」と銘打っている。
副題にもあるように、基本と文法を中心に解説している。
キーワードはもちろん、三つのCだ。
どうやら「英語論文ライティング教本」の基本と文法の箇所を、もう少しわかりやすくやさしく説明している感じだ。文字も大きくなり、ぱっと見ためにも見やすくなっている。
前作の「英語論文ライティング教本」では、「書籍は分厚くなりすぎて、文字も小さく、内容を詰め込みすぎた、と反省していました」とご自身が言うぐらいだったので、その点が改善されたのかもしれない。
「英語は3語で伝わります」
しばらくして本屋で英語関係の本を眺めていたら、一つの本が目についた。
なるほど3語で表現できるのなら、ありがたいなと思い手に取ってみた。
すると、著者が中山氏だったので、迷わず買ってみた。
「複雑な文をやめて、まずは3語(主語、動詞、目的語)で組み立てる」スキルを学ぶ本のようだ。
「英語論文ライティング教本」でも取り上げられていた「動詞主義」で、最も力強い印象を与えるSVOを使うという流れを汲んでいるのだろう。
しばらくすると、また似たような題名の本が出版されていた。
どうやら前作の実践編のような感じだ。100の例題をもとに、3語(主語、動詞、目的語)でシンプルに伝える英語を、わかりやすく説明している。
シンプルな英語
「3語で伝わる」から、「シンプル」へ。
主語と動詞で骨組みを決め、必要であれば情報を追加していく。英語は合理的な言葉だ。
内容は今までと一緒だ。SVOを中心に、主語と動詞で文章を組み立てる。時制と態を選択し、冠詞や前置詞に注意する。基本は変わることはない。
ただ今回はスピーキングの練習にまで踏み込んでいる。Google翻訳やDeepLを使った方法を、詳しく説明している。
「英語論文ライティング教本」から段々とわかりやすく、専門書から一般書へと、どんどん変化していっている感じがする。だが、根底にあるものは常に一緒だ。