山崎紀美子氏の速修マニュアル・英文法の核心・基礎英語を読み直す

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最初に「英語速修マニュアル」を読んで、とても感心したことを覚えている。ただ今となっては、何に感心したのかは思い出せなかったので、読み直してみることにした。

山崎氏は英語だけでなく、ロシア語やブルガリア語にも堪能で、東京外国語大学ロシア語学科修士課程修了後、モスクワ大学やブルガリア科学アカデミーにも留学している。

何せ、高校在学中に英検1級に合格している。その上、山崎氏はアメリカへの海外留学経験はないらしい。よく言われるように、留学したから英語ができるわけではないのだ。

山崎紀美子 ちくま新書

「英語速修マニュアル」との出会いが、最初だった

書店に溢れる英語関連の問題集の多さを、山崎氏は嘆いている。アンモナイトが奇怪な姿になったいった進化の過程に喩えながら、英語教育の将来を憂いている。語文訂正に書換え問題、何故これほどまでに沢山の問題が必要なのだろうかと。

とにかく「ひたすらテープを聞き、テキストを読み、辞書を引き、暗記するしかない」。それが健全な英語学習なのだ。そして、「日本は単なる英語天国であって、決して英語大国ではない」と、喝破している。

単語帳は自作するべきなのだろうか

今まで習った単語をテーマ別に分類して、単語帳を作ることを勧めている。思い出すのが簡単らしい。そして、作っているうちに覚えてしまったら、儲けものだと言っている。わたしも、これが単語帳を作る一番のメリットだと思っている。

あと、動詞には必ず例文をつけるように、いっている。ただ、動詞だけでなく、名詞以外は例文をつけたほうがいいだろう。

単語帳を作るか作らないかは、永遠の課題のような気がする。わたしは知らない単語が出てきたら、必ず辞書を引いてノートに書き写す。もちろん、それで覚えたのかと言われれば、また別問題だ。ただ、せっかく辞書を引いたので、それだけではもったいないので書き写しているだけだ。

「英和辞典への注文」の中で、一つの例として、”altruist”をあげている。「新英和大辞典」では、「愛他主義者、利他主義者(⇆egoist)」という難解な訳になっているそうだ。確かに、わたしの持っている辞書で調べても、同じような結果だった。ウエッブ辞書でも同様だ。

GENIUS英和辞典 : 訳語なし altruismに付随
リーダース英和辞典 : 訳語なし altruismに付随
熟語本位英和中辞典 : 他愛主義者、利他主義者
ウィズダム英和辞典 : 利他主義者
weblio : 利他主義者
Deep L : 愛他主義者、利他主義者
Google翻訳 : 利他主義者
英辞郎 : 利他主義者

そして、「お人好し」の訳語は思いつかなかったのかと言っている。だいたい、この単語自体、わたしは初めて見たし、そんなに頻繁に使われる単語なのだろうか疑問だった。辞書では項目こそ載せているが、訳語すらない辞書もいくつかあったほどだ。

すると、ちゃんとその後で、この単語を回収している。The Daily Yomiuri の4コマ漫画から、主人公の6歳の男の子のセリフを取り上げているのだ。

People always assume you're some kind of altruist.
まったく、みんな、人のことをお人好しだと思っているんだから。

なるほど、4コマ漫画で6歳児が使うぐらい、ポピュラーな単語なんだ。覚えておきます。

「英文法の核心」では動詞の活用(conjugation)に焦点を当てる

「英語速修マニュアル」第3章のタイトルと同じ名前で、新たに本を書いている。そこでは、述語動詞を中心に説明がされている。

英語の動詞のカテゴリーを、ムード・スタイル・テンス・アスペクト・ヴォイスに分けてキチンと整理する。そして語形と語法を混同しないことが、条件だ。

あと、この本の特徴としては、概言と定言という言葉を使っているところだ。センテンスの中で、助動詞を使っているかどうかで分けている。助動詞アリのセンテンスを概言(probable)、ナシを定言(assertive)と呼ぶらしい。これらは「やりなおし基礎英語」でも、引き続き使われている。

「実現」を強調するdid

意外に忘れがちなのが、過去形の使い方だ。現在完了や仮定法などを覚えると、過去形を自信を持って使えなくなる。というか、使い分けがわからなくなってくる。

「何かが実現できた時は、迷うことなく、単純過去を使」うことが大切だ。そして強調するならdidを使う。これが基本だ。

そして、「単純過去で言えることは、すべて単純過去で述べること」が、大原則だ。進行形や完了形は、どうしても必要のある時以外は、使わないことが大切だ。

「やりなおし基礎英語」は、基礎というわりには難しい

自分の意見のない人は、いくら会話の練習をしても無駄だと言い切っている。会話というのは「言いたいことがある」から成立するので、それがなければ勉強のしようがないとまで断言している。

そして自分の意見を述べるには、口頭で翻訳ではなく、作文しなければならない。そして、会話のコツとして、二つあげている。

一つは相手が利用した表現を再利用すること。聞き取れなかったら、何度でも繰り返してもらう。これがなかなか実践では難しい。どうしてもわかったふりをして、スルーしてしまう。

第二は、自分が知っている表現の中で、なるべく簡単な表現を使う。結局、英会話とは英作文の連続なので、なかなか簡単に完全なセンテンスを作る暇がない。その場合は単なるフレーズだけでもいいので、話をつないでいく。これだけで、も会話はスムーズになるものだ。

とにかく気に入ったら、続けて書籍を買い続ける

わたしは以前から著者のことを気に入ったら、しばらくはその著者の書籍を買い続ける癖がある。もちろん、これは誰かの受け売りなのだが、割と自分の性分に合っている。

谷沢永一、柳瀬尚紀、米原万里、野口悠紀雄など、ずっと好きで読んでいる人もいれば、途中で読むのをやめてしまった人もたくさんいる。続けて読んでいる人たちに共通することは、文章がとてもわかりやすいことだ。一回読めば、内容がスッと頭の中に入ってくる。もちろん、理解できているかどうかは別の話だ。

頭のいい人はこれだけわかりやすく文章を書けるのだと、感心したものだ。確か野口氏が書いていたと思うのだが、小学生や老人でもわかる文章をかける人が、本当に賢い人らしい。

著者近影

もっと別の写真が、なかったのだろうか。だが、3冊とも同じ写真ということは、ご本人自身はこれがいいと判断しているのだろう。逆にとてもインパクトがあって、私は気に入っている。

山崎紀美子 ちくま新書裏面

山崎氏の書籍が、新書で手に入るようになって欲しいものだ。

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