「スーパーレベルライティング」の奥付を見ると、「初版発行 2005年1月25日」となっている。買ってからもう17年も経っているのかというのが、素直な感想だ。
「英語で意見を論理的に述べる技術とトレーニング」も、2005年に買っているようだ。あと、「スーパーレベル英文法」は、その3年後ぐらいに購入している。この2冊に関しては、ほぼ手付かずの状態だ。
3冊ともほとんどまっさらなのだが、その中でも一番手をつけていた感じのある「スーパーレベルライティング」から読んでみた。
なんと出だしからつまずいていた
この本は第3章からが本題になっている。第1章と第2章は、「日本人ライティングの問題点」と「資格検定試験の問題傾向と対策」で、いわば序章のようなものだ。
しおりが、第3章の最初のページに挟まっていた。つまり本題にはいる前に、力尽きたのだろう。今、読み直してみても、その気持ちがわかるような気がする。
今まで見たことのない単語が、たくさん出てくるのだ。それも次から次に、いくつもだ。出だしで既に、心が折れそうになる。
generalな語彙とspecificな語彙
結局、general wordsでは不十分なことが多いので、specific wordsをたくさん覚えて使い分けをしたり、意味を明確にするために用いる必要がある。
「general wordsは意味が広くて文脈依存度が高いので、意味がぼやけやすくなるのに対し、specific wordsは用法が少ないので、意味がわかりやすく、しかも短く引き締まっている」から、specific wordsを積極的に活用していきましょうということらしい。
確かに日本語でも、他の言語でも、同じことだ。語彙をたくさん覚えて使いこなせるようにならないと、特にライティングの場合には幼稚に思われてしまう。
そういった類語の使い分けを行うためには、下記の3点が重要だ。
- フォーマル・インフォーマル度(the degree of formality)
- 語調(tone)
- 語と語のコンビネーション(collocation)
そして、「フォーマル・インフォーマル度」の6段階の説明が、
- 文語(literary)
- 正式語(formal)
- 一般標準
- 口語(colloquial)
- 俗語(slang)
- 卑語(taboo)
となっている。ここまではギリギリセーフなのだが、次の「語調」についての説明が、
- appreciative(ほめて)
- derogatory(けなして)
- jocular(おどけて)
- euphemistic(婉曲に)
- figurative(比喩的に)
となっている。もう思考が、一瞬止まってしまいそうだ。appreciative, figurativeはなんとなく分かるけど、あとはちょっと、、、というのがわたしの現状レベルだ。
そして、「語と語のコンビネーション」では日本語の「かたい」を例に挙げ、”hard” “tough” “firm” “stiff” “solid” と使い分けるように説明している。
- hard+「岩、パン」
- tough+「肉、革」
- firm+「信念、決心、足場」
- stiff+「表情、文体、紙」
- solid+「基盤、投資」
- tight+「栓、結び目」
“tight” は、「スーパーレベル英文法」で説明されていたので、追加しておいた。
また「わかる」にしても、何がわかるかによって”recognize” “appreciate” “understand” “realize”と変わってくるそうだ。この4つの動詞に、そんな違いがあることは知らなかったのだが、解説では、
- recognize(見聞きしたことが話からで何かわかる)
- appreciate(良さ、状況が)
- understand(状況、気持ち、意味などが)
- realize (今まで分からなかったことが)
となっている。なるほど。また、それ以外の動詞には、
- comprehend (複雑なことが)
- get hold of, distinguish(違いが)
- interpret(行動や出来事に何らかの意味があると)
- perceive(わかりにくいものに気づく)
- acknowledge(事実や状況などを)
- discover(事実や答えをつきとめる)
- sense(情報も証拠もなくカンで)
- fathom(難しいことを注意深く考えて)
- read(人の心を)
- notice(五感や経験などで気づく)
- detect(はっきりしないこと)
- see, get(良さ、状況が)
- find, follow(話や説明が)
- catch(聞いて情報を)
- identify(正体、起源などが)
- figure out(解決策や理由などが)
という区別があるそうだ。素晴らしい。もう、めまいがして来そうだ。
類語を使い分ける
そして「言う、話す」の類語から、説明が始まる。例題で取り上げられているのは、state, allege, voice, claim, utterの五つだ。
- allege-証拠を示さずに悪事や違法行為などを伝える
- claim-証拠があるわけではないが、一方的に正当化を主張する
- state-意見・情報などを正式に、書面あるいは口頭ではっきりと伝える
- voice-ある事柄に関する感想や感情を述べる
- utter-考えや感情を伝えようと音や言葉を発する
この例題で取り上げられている五つの単語を、ウィズダム英和辞典で調べてみると、
- allege-(証拠なしに)…であると主張する、(証拠もなく)…を申し立てる
- claim-だと主張する、を要求する、<関心>を呼ぶ、を勝ち取る、<人命>を奪う
- state-(明確に)…を述べる、<情報>を記す、<文章が>書いてある
- voice-<意見・気持ち>を言う、…を有声音で発音する
- utter-<言葉>を言う、<考え>を述べる、…を公にする、出版する
とあり、確かに同じような意味ではあるが、これらを「言う、話す」の類語というかと言われると何だか微妙な気がする。「言う、話す」の定義をそこまで大きくしてしまうと、逆にややこしくならないのかと考えてしまう。
そして、上の五つの単語を選んで、下記の( )の中に入れるのが問題だ。
- The public official was ( ) to be members of an illegal secret society.
- He ( ) to be a Scot but had a powerful Liverpool accent.
- The Government needs to clearly ( ) its policy on UN intervention.
- The African delegates ( ) their anger.
- Sam opened his mouth, then quickly shut it again without ( ) a sound.
初見では、全くわからなかった。自信を持って選んだものは、一つもなかった。後から解説を読んで、初めて少しだけ理解できた程度だった。
結局、ここが問題なのだろう。分かる人はこの文章にならこの単語しか当てはまらないと、自信をもって一つを選べるのだろう。しかしそこまでの域に到達するのが、大変なのだ。中途半端にやっているから、いつまで経ってもそのギャップが埋まらない。
ちなみに、解答は下記の通りだ。
- alleged-証拠がなく真偽のほどは確かでないが…と言う意味
- claimed-本人の主張の正当性を第三者が確かめることができないので、
- state-政府が公に政策を発表する
- voiced-angerという感情を言葉で表すので、
- uttering-言葉にもならず、音さえも出せなかったいう文脈で、
このような理由でちゃんと正解できるようになれば、わたしの英語力も数段アップされたと言えるのだろう。
とにかく類語の数が多い
その後に、Spoken English、中間的なもの、Written Englishと三つに分けられた中に、71個の単語と熟語が紹介されている。そして例題に使われた単語以外に、24個の語彙の説明が同様に加えられている。
その中でも特に重要語彙である7つには☆印がついており、下記のような説明がある。
- discuss-何かを決めたり意見を交わすために話し合う
- imply-考えや感情を、婉曲的に、持って回った言い方で伝える
- argue-明確な理由を述べて、考えや意見を述べる
- maintain-強く自分の意見を主張する
- refer to-ある特定の事柄について、書面や口頭ではっきり述べる
- mention-会話の中で、簡潔に物事や人について話す
- suggest-人に考えてもらうために計画や考えを提案する
- whisper-人に聞こえないように、声よりも息を使って、とても静かに話す
だが、わたしの頭の中でのそれぞれの単語の意味は、
- discuss-議論する
- imply-暗示する
- argue-論争する
- maintain-主張する
- refer to-言及する
- mention-(会話・文章中で)<人・事・物>に軽くふれる
- suggest-提案する
- whisper-ささやく
という1対1の訳語になる。mentionは「言う」と意味でしか理解していなかったので、辞書で調べたものを採用した。
比べてみると、意味としてはほぼ同じだ。具体的に書いているかどうかの違いだけだ。実際わたしは今までこの意味だけで英文に対応してきたが、それほど不自由した記憶はなかった。
だが、それがいけなかったのだ。一方通行だったのだ。英文を読むときはいいのだが、自分が英文を作るときには、その英単語が浮かんでこないのだ。そこが問題だったのだ。
どれだけ重要動詞があるのかというぐらい、たくさんある
「最重要動詞グループ」が8つ続いたあとに、「重要グループ」が12コ追加されている。しかし、その次に「覚えてほしいグループ」が10コ補足される。
それでも収まりきらず、見る(see)と、殺す(kill)が図として挿入されている。多分これでも数を抑えて、厳選したものだけを載せているのだろう。
そして「覚えてほしいグループ」の中から一つ例に取ると、(ためらう)では、
- flounder > falter > hesitate > vacillate > waver
の順に意味が弱くなるそうだ。hesitateとwaver以外、全く知らない単語だ。それぞれの意味は、
- flounder-混乱してまごつく
- falter-疑い、勇気のなさ、無能、不器用のためしり込みする
- hesitate-迷いで行動を一時的にやめるか躊躇する
- vacillate-両極端を揺れ動く
- waver-いったん決心がついたかのように見えて、その後ためらう
となる。これら以外にも口語として、have second thoughts about〜(一度きめたあとで)、be of two minds about〜(決める前に)を取り上げている。
多義語の知識の重要性
英語の特徴である、英単語の多義性を取り上げている。英語には一つの単語に何十という意味、用法がある。この「発信の合理性」のおかげで、少ない語彙数でもコミュニケートできるようになっている。
日本人は多くの単語を知っているように見えても、その理解は浅く、実際には使いこなせていない。だから、うまく読めない、聞けない、話せない、書けないといった現象が起こるのだ。
特に初級・中級レベルに習う2千から3千語レベルの単語はなじみ深く、「知っているつもり」になっている。だが、実際は意味が多く広がりもあるため、意外と知らないし、使えない単語が多いのが現状だ。
つまり、generalな語彙である多義性単語も、specificな語彙である高度なレベルの単語も、両方絶対欠かせないということだ。日本語にとっての漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字を、全てマスターするようなものだ。
とにかく内容が豊富で、とても一回読んだだけでは消化しきれない
よくもまあ、これだけの内容を詰め込んだなと思うほどの分量だ。それでも多分、書きたいことの半分も、書ききれていないような気がする。これで税抜2,000円を切っているのは、とても信じられない。コストパフォーマンスは、相当に高いと思う。
わたしは以前、書籍の購入価格に2,000円という上限を設けていた。もちろん、書籍に費やせる額も決まっていたので、どうしても一冊に高い金額をかけれなかった。少しでも2,000円を超える書籍は、相当悩んで買ったものだ。悩んだ甲斐があって、だいたい買って損したと思うことはなかった。
しかし、ある時点から2,00円を超える書籍が、増えてき出した。明らかに書籍の値段が上がってきた。いろいろな諸事情を考えると、ある程度は仕方がないのだろう。
しばらくは抵抗していたのだが、あるときに諦めてしまった。それからは3,000円が、一つのラインになっている。
恐るべき著者紹介
あと、植田氏の著者紹介には、とにかく圧倒される。
英語の百科事典を10回以上読破し、辞書数十冊を読破&暗記し、洋画100本以上のせりふをディクテーションするという超人的努力を果たす。
「発信型英語スーパーライティング」著者略歴より
まさに、超人!いったいこれらを成し遂げるために、何十万時間をかけたのだろう。というか、わたしなら、一生かけても辞書一冊を暗記することは不可能だ。と言うか、せめて辞書の読破だけでもしたいものだ。