6冊とも書店で見かけて手に取ったもので、最初から購入するつもりではなかった。題名に惹かれたせいだろう。やはり題名というのは、大事だ。
とにかく、これらがだいたい1,000円で買えるというのが、ありがたい。また内、2冊は1,100円と1,200円というのも、それぞれの事情があるようで面白い。
そして6番目に読んだのが、「世界は「e」でできている」だった。
世界は「e」でできているとは
なかなかインパクトのある題名だ。著者の金重明氏の書籍は初めて読むのだが、とても読みやすくて面白かった。わたしには少し内容が難しかったが、あっという間に読み終えてしまった。
最初は指数関数について書かれている。人間の脳は線形思考をするように進化したため、指数関数的な話には騙されやすい。そして脳が石器時代の生活に適応するために、線的思考をするように進化したらしい。
指数関数を表現するとき、その底に「10」や「2」を使うのは、直感的に便利だと理解できる。しかし、ひねくれ者の数学者は、わざわざ「e」を用いるらしい。
臂鞲(ひこう)の意味が気になってしまう
第1章の初めに、「臂鞲(ひこう)」という、今まで見たことがない言葉が出てきた。調べてみたが、その言葉自体がどうしても見つからない。気にはなったのだが、直接この本の内容とは関係がないので、途中で調べるのを諦めた。
だが、読み終わってからどうしても気になるので、再度調べ直してみた。すると「臂」というのは、「うで・ひじ」という意味らしい。
なるほど、八面六臂という言葉を思い出した。いろいろな方面で、活躍をする意味だが、これはもともと、仏像などで八つの顔と六本の腕をもっているということらしい。「面」が顔で、「臂」はひじ・腕ということだ。
それよりも困ったのは、「鞲」という文字だ。手書き検索やら部首検索を活用して、やっと弓を射るときに左腕につける防具で、弓籠手(ゆごて)という意味だとわかった。
どうやら出だしの文章は、杜甫の五言絶句から引用しているようだ。
百寶裝腰帶 百宝は腰帯に装い
杜甫
眞珠絡臂鞲 真珠は臂鞲に絡う
笑時花近眼 笑いし時は花の眼に近づき
舞罷錦纏頭 舞い罷れば錦は頭に纏う
簡単に言うと 「臂鞲」とは、 腕に付ける恐ろしく太いバングルといった感じだ。それがわかると次は「セッサ」という人物が気になってくるが、もうキリがないので、これぐらいにしておこう。
「e」とは?
世界は「e」でできているといっているのに、それが何なのかという説明がなかなか出てこない。それどころか途中から、なんだかはぐらかされているような気すらしてくる。
そして、今まで忘れていたかのように急に、「今まで黙っていたが、実は e はネイピア数と呼ばれている」と、124ページになって初めて言及している。何とも人をくったような言い回しが、なぜか心地よいから不思議なものだ。
超越数
数直線上には、代数的数ではない数が、代数的数よりもはるかにたくさん存在している。そしてこの代数的数でない実数のことを、超越数という。
超越数は代数的数よりはるかにたくさん存在しているにもかかわらず、認知されている超越数はごく僅かに過ぎない。その代表が、πとeだ。
それにしても実数のほとんどすべてが超越数をいわれているのに、人知が知っている超越数が数えるほどというのは、恐ろしい話だ。
そして、 πとeが超越数であることは証明されているが、 π+ e が超越数であるかどうかはまだ証明されていないらしい。
科学ですべてを解明できるのか
著者は、円から生まれた関数なのにcosθ、sinθが三角関数と呼ばれていることや、i が虚しい数と呼ばれていることに不満を漏らしている。そして、e が今後大活躍することを願っている。
そして、人類はいまだに超越数について無知であるのと同様に、この宇宙についても知っていることはごくわずかだが、そのカギを握っているのが複雑系の科学らしい。
そして今後の自然科学や数学にドラスティックな変化をもたらしていくのは、その複雑系の科学だと言っている。